エロゲのことがよくわからない? よし、ならばわたしが

説明してやろう。

 

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こちらを読んで、急にエロゲの話がしたくなったので書く。

 

はじめに

わたしは00年代前半からその手のゲームを趣味とするようになった人間です。
入口はコンシューマ版のAIRだった。次にKanon
その後共通の趣味を持つ友人関係が出来たことで、貸し借りも含めてプレイしてきたタイトルは軽く数百は越えます。
しかし、わたしも当初は「エロゲなんて変態がやるもの。恋愛シミュレーションすら恥ずかしい」というスタンスでありました。
「泣ける」だの「感動する」だの言うけど、それってどうせエロゲやるための言い訳だろ?という、件のブログの主張の一部は、まさしくジャンルに踏み入る前のわたしの言い分と合致しております。
なので、多分執筆者はこの手のゲームをそれ程多く経験していないんじゃないかな。
あ、主張の内容はジャンルに詳しくない一般人の感覚としてはごくごく普通のものですので、それ自体は全く珍しくも何ともないです。
ツッコミを色々書こうと思ってたんですが、下記ブログにてわたしの八億倍くらい真っ当なツッコミをされておりますので特に書くことないです。

 

p-shirokuma.hatenadiary.com



じゃあ何書くのよっつっても別にネタがあるでもないので、やっぱりエロゲの話をするね。

 

 定義の話

ここで言う「エロゲ」とは単純に18歳未満は購入できないゲーム全般を指します。
いくらエロかろうとアルトネリコは一般ゲーだ。いいね?

 

ジャンルの話

一般ゲーにRPGSLG、アクション、格ゲーなどなどのジャンルがあるのと同様、エロゲにも様々なジャンルがあります。
ここで言うジャンルとはゲームシステム的な意味合いであり、例えば「泣きゲー」や「抜きゲー」などの作品の傾向を指すものとは異なります。ここら辺がエロゲのジャンル分けをややこしくしている一因でもあるのですが(いくら泣けてもFFを泣きゲーとは言わないし) とりあえず本記事内において「ジャンル」はゲームシステムを指すものと思って頂ければ。

とにかく、エロゲにも様々なジャンルがあるのです。
まず代表的なジャンルはADV(アドベンチャー)と呼ばれるもので、キャラの立ち絵、背景、テキストで画面が構成された、いうなれば紙芝居ですね。紙芝居とは言え、演出やら何やらは年々進化しており、画的に楽しめるタイトルも増えてきております。
代表的なメーカーは、うーん、最近だとどこだろ。コンスタントにADV出し続けてるのはFrontwingあたりかな? かつて三大ブランドと呼ばれたエルフ、アリスソフトF&Cもコンスタントに新作を出していますが、ここらはSLGも多いので。

次に多いのはSLG(シミュレーション)あたりでしょうか。
一般ゲー同様、一口にSLGと言ってもバリエーションは非常に豊富ですが、ときメモライクな「恋愛SLG」は最近ではほとんど見かけません。「PRETTY×CATION」とか、あるにはあるんですけども。
あ、前述したアリスソフトは地域制圧型SLGをお家芸としております。凄まじく遊べます。大帝国とか何時間やったか最早記憶にない。他にSLG専門のソフトハウスキャラというブランドもありますが、ここは経営SLGライクな作品が多いです。最大の特徴は飽きない限り永遠に遊べるやりこみ要素。
あとザウスの「永遠のアセリア」シリーズはかなりRPG寄りのSLGですね。具体例を挙げるとキリがないのでこの辺で。
その他のジャンルは結構珍しいのですが、RPGやアクション、パズル、格ゲー、色々あります。3DアクションRPGなんかもありますよ。昔Leafが出した「君が呼ぶ、メギドの丘で」とか。

とまぁこのように、一口にエロゲと言っても様々なジャンルが存在します。が、大雑把に言って全体の8割くらいがADVです。残り2割の大部分がSLG、その他は年に数本あるかな?といった程度です。

 

シナリオの話

で。ここからはADVをメインにシナリオの傾向についての話をします。
いわゆる「泣きゲー」「抜きゲー」「鬱ゲー」といった区分の話。
エロゲにおいては、前述したゲームシステムのジャンル分けよりも、これらシナリオの特徴によるカテゴライズの方が一般的です。何故かというと、エロゲのメインジャンルはADVであるが故に、システムによる差別化が困難であるからです。そのため、例えばSLGを「◯◯ゲー」と呼ぶことはあまり無いように思います。
また、これらの切り分けは極めて主観的かつ曖昧です。例えば、ageの大作「マブラヴ オルタネイティブ」は、その世界観やシビアな展開から「鬱ゲー」と呼ばれる一方で、主人公の活躍や終盤の展開をして「燃えゲー」と呼ぶ向きもあります。あと沙耶の唄とか。いやあれは純愛か。純愛だな。

そういうわけで、多分にわたしの主観が混じることをご容赦頂きつつ、各シナリオの傾向を簡単に解説します。

純愛ゲー

最もメジャーかつオーソドックスかつ毒にも薬にもならないシナリオ全般を指して純愛ゲーと言います。多くの場合、ヒロインは幼馴染、転校生、妹、先輩の四人+αの学園モノです。
大抵の場合、共通ルートでの各ヒロインとの出会いと交流を経て個別ルートに入り、そのルートのヒロイン以外がすっと消滅。告白イベント、デートイベントなどを消化後、何らかの問題が発生、それを解消してハッピーエンド、という展開を取ります。
世界観やヒロイン、その他諸々の設定によって多くのバリエーションがあり、シナリオにおいては個別ルート後半の「何らかの問題」を解決する部分がクライマックスになります。
基本的に、様々なシナリオの傾向はこの純愛ゲーを基準として判断されることが多いと思います。
代表作は多すぎて一概には言えませんが、ざっくり言うとロボと異世界が絡まない戯画のゲーム(初期を除く)は大体テンプレ的純愛ゲーだと思います。
他にはHOOK SOFTはベッタベタの純愛ゲーメーカーですが、これは萌えゲーですかね。

 

泣きゲ

読んで字の如く、泣けるシナリオ、あるいはプレイヤーを泣かせることを主眼に据えたシナリオです。Keyのヒット以降、00年代前半に流行しましたが、最近は下火ですね。
シナリオ展開は前述した純愛ゲーと被ることが多いです。というか、これが流行ってた時期は純愛ゲーのクライマックスに感動的な展開を組み込んだタイプのシナリオが多く、それらを泣きゲーと見るか否かは非常に微妙な問題でもあります。
「とりあえず泣ける話なら泣きゲー」という単純な分け方をしてもいいのですが、テンプレ展開としてヒロインが(多くの場合病気で)死んだり回復したりする話は泣きゲー的なるものでしょう。
なお、全編コメディタッチでありながら特定のヒロインの個別シナリオでのみ泣きゲー展開に入るような作品もあります。グリーングリーン、お前のことだぞ。
代表作はKey全般の他、「こなたよりかなたまで」や「車輪の国、向日葵の少女」あたりが有名です。どちらも十年以上前のゲームですが。

 

萌えゲー

純愛ゲーと抜きゲーの狭間にあるとも無いとも言われる、純愛ゲーより抜きどころを多く用意しているが、抜きゲーほどシナリオを捨ててもいない、そんな感じのシナリオ。定義が曖昧ですが、わたしは純愛寄りの抜きゲーを指してこう呼んでいます。
特徴的な点としては、泣きゲーや純愛ゲーにありがちなシリアス展開が少ないことが挙げられます。代表的な展開としては、ハーレム物や純愛イチャラブコメディなんかはここに入ると思います。あとシーン回想が1キャラあたり5種以上になれば概ね萌えゲーじゃないでしょうか(適当)
なお、シーン回想の数については、純愛ゲーは大体1キャラあたり3~4種、泣きゲーは1~3種くらいが一般的です。
場合によってはバカゲーに分類されるものも多く、全体的にコメディタッチの強い作風が多い印象です。
HOOK SOFTの純愛ゲーは割と萌えゲー要素が強いです。

 

抜きゲー

これも読んで字の如く、実用性(意味深)に特化した作品全般がこれに当たります。広げれば大量のバリエーションがあるんですが、わたし自身があんまり詳しくないのと、あと多分収拾つかないので、まとめて抜きゲーとしています。
エロゲをよく知らない人がエロゲと聞いて真っ先に思い浮かべるイメージは多分これです。痴漢モノから寝取り寝取られレイプ陵辱催眠女騎士など、テンプレも多岐に渡ります。
実用性に特化するという性質からか、ロープライスのDL販売タイトルは大体この手のゲームですね。そのせいかシステム面が微妙なことが多いです。
あとタイトルがド直球に最低なので新作カレンダーとか見てると割と楽しいです。
なお、人によってはハードな抜きゲーを「ヤリゲー」と呼ぶこともあります。
代表作は何でしょうね。一生忘れないタイトルは「痴漢者トーマス」で確定なんですが、僕はパッケージ見て避けるのでよくわかりません。

 

バカゲー

ダークではなくファンキーに突き抜けた抜きゲーをしてバカゲーと呼びます。要するにソフトハウスシールです。
ギャグ特化の抜きゲーであり、基本的に深く考えたら負けな世界観が最大の特徴です。
これに関してはアレコレ説明するよりタイトルを列挙した方が理解が早いと思うので、以下にソフトハウスシールの人気バカゲーシリーズのタイトルを並べておきます。

「ぜったい中出し警報! -中出ししないと人類滅亡!?-」
「ぜったい遵守☆強制子作り許可証!!」
「ぜったい絶頂☆性器の大発明!! ─処女を狙う学園道具多発エロ─」
「ぜったい猟域☆セックス・ロワイアル!! 〜無人島犯し合いバトル〜」
「ぜったい最胸☆おっぱい戦争!! 〜巨乳王国vs貧乳王国〜」
「ぜったい遵守☆強制子作り許可証 ぱらだいす!!〜嗚呼、素晴らしき孕ま世界〜」
「ぜったい征服☆学園結社パニャニャンダー!! ~ドピュっと遂行、色欲怪人イタズラ実習エロ作戦!~」

な、バカだろ。

 

燃えゲー

硬派・熱血なバトル中心のシナリオの総称です。わたしが追っかけてるエロゲが大体これです。泣きゲー以上にエロがオマケ扱いされることが多く、実際わたしもエロシーンはスキップすることが多いです。
傾向としては能力バトルや異世界モノ、ロボット等が多いですね。ボディガードも一時期流行りましたが。
具体的に言えば本編もスピンオフもTVアニメ化されたFateシリーズがその典型です。
ラノベ的エンタメ作品に近いのですが、物によってはエロゲの癖にヒロインの扱いが雑でオッサンばかり活躍したりします。楽しい。
代表的なメーカーはニトロプラス。っていうかニトロプラスの代名詞みたいなとこあります。他には先に軽く触れたザウスの「永遠のアセリア」やageの「マブラヴ」、lightの「Dies irae」「神咒神威神楽」など。

電波ゲー

電波的狂気に満ちたシナリオを指します。
終ノ空」「さよならを教えて」「ジサツのための101の方法」の三作が三大電波ゲー(たまに四大とか五大になりますが)として名高いタイトルになります。
個人的には、ここに「沙耶の唄」を含めるのはちょっと違う気がします。あれは電波というかサスペンスホラーに近いと思う。
それはともかく、バカゲーがファンキーに突き抜けたシナリオであるとすれば、電波ゲーはルナティックに突き抜けた作風と言えます。クレイジーとも言います。イメージとしては、「ゆめにっき」が近いです。あるいは西尾維新の「ニンギョウがニンギョウ」
つまり言語化するのがとても難しい。
三大電波ゲーは現状入手困難ですが、「終ノ空」と微妙に関連のある「素晴らしき日々」というゲームが出ております。こちらは電波もさることながら、非常に読み応えのある内容で面白かったので、素直にオススメです。

キャラゲー

純愛ゲーと萌えゲーにとにかく可愛いキャラを詰め込んで4で割ったみたいな作風。厳密にはシナリオの区分では無いのですが(というかシナリオが薄い……)、こういう枠でもないとLump of sugarの居場所がなくなるので書いておきます。
キャラだけは大変魅力的であるものの、肝心のストーリーが薄いので、わたしのようながっつりテキストを読みたいゲーマーとは最も相性が悪いタイプです。

 

鬱ゲー

こちらも読んで字の如く。
とにかく終始展開が鬱々としたものから、最後の最後でヒロインや主人公が報われないものまで、展開は様々で、ものによっては泣きゲーに近いものもあります。
泣きゲーとは共通点が多く、こちらもヒロインがよく死にます。死亡フラグを回避できるルートが用意されていることもあれば、ないこともあります。
ものによっては、ヒロインが死ぬか、死んだ方がマシな状態になるか、そういう二択を迫られることもあります。
たまにLeafがガチなタイトルを世に出しますので注意してください。
代表作としては「天使のいない12月」や「ゆきうた」がありますが、電波ゲーに挙げた「さよならを教えて」は鬱ゲーにおいても最強と名高いタイトルです。
しかしわたしとしては「ゆきうた」を絶対に許しません(褒め言葉

 

その他、あまり一般的ではないが便利なワード

以下はジャンル的に広く使われているわけではありませんが、ここ最近の流行や上記のどれにも属さないシナリオを指す言葉です。
一応、なんとなくニュアンスは伝わりますので、有事の際にご活用ください。

 

シナリオゲー/読み物ゲー

絵やシステム、キャラクター以上にシナリオに力が入っているゲーム全般を指します。
雰囲気ゲーやバカゲーとは対極的な作風ですが、一部の電波ゲーや純愛ゲー、燃えゲーの中でも名作と名高い作品は割とシナリオゲーと呼ばれます。
典型的な特徴としては、単純にテキストボリュームが膨大であったり、伏線回収やクライマックスの展開が秀逸であったり、シナリオを進行する上での細かなギミックや設定の完成度が高かったりと、全体的に読み物としてのクオリティが高いのが特徴です。
雑に代表作を挙げると田中ロミオ作品リストみたいになるんですけど、中でもボリュームがボリュームな「最果てのイマ」あたりを推しておきます。
あまり話題にはなりませんでしたが、LOVERSOULの「春萌」はとても読ませる良い文章だったと思います。
あと「はつゆきさくら」も好きです。

 

雰囲気ゲー

シナリオやシステムよりも背景や音楽等の雰囲気重視の作風がこう呼ばれます。
主にminoriです。新海誠相田裕のコラボが見られるのはminoriだけ!
雰囲気と言ってもそれを構成する要素は様々ありますが、独特な世界観という点では燃えゲーでも挙げた「神咒神威神楽」は徹底していました。
作品世界の空気感の演出みたいな部分では「きっと、澄みわたる朝色よりも」が非常に綺麗だったと思います。ただ長いんですよねコレ。
やや趣が異なりますが、UIデザインが素晴らしい「CURE GIRL」も雰囲気ゲーと言えば雰囲気ゲー。
シナリオゲーに近い部分はありますが、難解なおかげで雰囲気程度にしか理解できないという意味で「猫撫ディストーション」と「ギャングスタ・リパブリカ」も雰囲気ゲーかも。

 

青春ゲー

純愛ゲーのバリエーションの一つですが、最近では割と大きく取り上げられることも多いタイプのシナリオです。
部活やスポーツ活動の中でヒロインと出会うパターンが多いですが、最大の特徴は恋愛よりもスポーツや部活を中心にシナリオが展開していく点です。
そのため、ものによっては部活モノと言われたりもしますが、部活以外のテーマも多いので、青春ゲーと括っています。いわゆる青春小説のゲーム版という認識でも概ね問題ありません。
純愛ゲーのバリエーションではありますが、大きな違いとして、個別ルートに入ってもサブキャラがフェードアウトしない作品が多い気がします。
例えば「蒼の彼方のフォーリズム」は架空のスポーツのチームメンバーや他校の選手がヒロイン候補となるので、終盤までそれぞれのキャラクターに役割が与えられています。
代表作を挙げるのは難しいですが、部活モノとしてはPULLTOPの「この大空に、翼を広げて」や「蒼の彼方のフォーリズム」があります。
部活に限らず青春ゲーといえば「この青空に約束を」が有名ですね。
癖はあるけど「ラブレプリカ」も一応ここに入るのかな?

 

キリがないので一旦ここまでにしますが、このように、一口にエロゲと言っても様々な方向性がありますので、「泣きゲーはクソ」みたいなこと言ってる暇があるなら家族計画でもやってる方が余程心にいいですよ。

心の健康、大切にしていきたいものです。

 

何の話だ。